みなさんこんにちは。税理士の太田圭子です。今年もようやく確定申告が終わりました。
初めて申告の依頼を受けたお客様からは、参考のために過去の申告書を見せてもらうのですが、それまでご自分で申告されていた方などで、税金を払い過ぎておられる方を見つけることがあります。もちろんその場合は払い過ぎた税金を返してもらう手続きを確定申告と並行して行います。そうすることによって問題なければ過去5年分の払い過ぎた税金を返してもらえるのです。
そこで今回は見落とすと税金の払い過ぎとなってしまうよくある事例について紹介いたします。
Ⅰ. 実は見落とされやすい所得控除
1. 離れて住んでいる親を扶養に入れていなかった。
よくあるのが、別居の親を扶養に入れていなかったケースです。例えば父の控除対象配偶者であった母を、父亡き後、生活費の仕送りや医療費の負担などをして同一生計であったのに扶養に入れるのを忘れているケース。別居であっても同一生計の親の所得が48万円以下(65歳以上で年金のみなら年金収入が158万円以下)であれば48万円(70歳未満の親であれば38万円)の控除が可能です。
2. 自分の所得が下がってしまった年は自身が配偶者や子の扶養親族になれる。
例えば不動産所得であれば大規模修繕などでその年の所得が例年より大きく下がってしまうことがあります。所得が48万円以下となれば同一生計の子供や配偶者の扶養となることができます。48万円を超えていても133万円以下であれば配偶者の所得が1,000万円以下であることを条件に、最大38万円の配偶者特別控除が使えます。所得がある妻や子があなたを扶養に入れて確定申告をすることにより税金の還付を受けることが可能です。
3. 寡婦控除をしていない
夫亡き後、相続した駐車場や貸家の不動産収入を申告している妻の所得が500万円以下であれば寡婦控除(27万円)が可能です。寡婦控除は離婚であれば扶養親族がいることが要件となりますが、死別の場合、扶養親族がいなくとも対象となります。
これらの控除もれにより払い過ぎとなった税金の額は人によって異なりますが、例えば上記1、別居の親の事例で課税所得が500万円の人の場合を例にとると、払い過ぎた金額は下記のとおり、1年で14万4千円、5年間累計では約72万円程度となります。
48万円×30%(所得税+住民税の税率)=14万4千円
14万4千円×5年間 = 72万円
これは返してもらわなければもったいないですね。
Ⅱ. 払い過ぎた税金を返してもらう手続きは主に二つ
1. 年末調整のみで確定申告をしていない人は確定申告をすればOK
還付を受けるためにする確定申告は、還付申告をする年分の翌年1月1日から5年間行うことができます。例えば令和7年中であれば令和2年分まで遡って申告が可能ということになります。
2. 既に確定申告をしている人は「更正の請求」が必要
確定申告書を既に提出している人は「更正の請求」という手続きにより払い過ぎた税金の還付請求をします。更正の請求ができる期間は、原則として、法定申告期限から5年以内です。 更正の請求書を提出すると、税務署でチェックを受け、正当と認められたときは、払い過ぎた税金が返ってきます。所得税還付の後、しばらく経って住民税が連動して還付または減額されます。
1の場合と同様、令和7年中ならば令和2年分までの更正の請求ができます。
Ⅲ 最後に
年末調整での記載もれや、ご自身で確定申告をされている場合によくあるもったいない事例を紹介しました。この記事をみて思い当たることがあれば税理士にご相談を。期限を過ぎてしまうと返してもらえませんので注意しましょう。