前回に引き続き、令和3年度税制改正大綱の内容を解説します。
~第391号(その1)からの続きです~
(3)固定資産税の据え置き措置
2021年度(令和3年度)は3年に一度の評価替えの年です。
本来であれば、地価の上昇に伴って、固定資産税が増額される見通しだったものが、新型コロナウイルス感染症により状況が大きく変化したことを踏まえて、以下の措置が取られます。
<改正の概要>
①2021年度(令和3年度)に限り、2020年度(令和2年度)の課税標準額(※1)と同額とされる措置が取られます。
②2022年度以降についても現行の負担調整措置(※2)の仕組を2023年度(令和5年度)迄継続します。
※1 負担調整措置とは、固定資産税等の負担の急増を回避するために、固定資産税評価額に応じた税額まで段階的に引き上げる仕組みをいいます。
※2 課税標準額は固定資産税評価額に負担調整措置が行われた金額となります。
<改正のイメージ>
なお、留意点としては、今回の改正については課税標準額の据え置きであり、固定資産税評価については従来通りの評価替えが行われる見込みである、ということです。
不動産取得税・登録免許税・相続税等の計算にあたって使用する数値は課税標準額でなく、固定資産税評価額となります。
したがって、不動産売買や相続、贈与の際には評価替え後の固定資産税評価額を用いる点に注意する必要があります。
(4)住宅ローン控除の改正(13年間の特例の適用期限の延長及び床面積要件の緩和)
令和元年度税制改正により設けられた住宅ローン控除の特例(従来の10年間⇒13年間に延長)ですが、契約期限及び入居期限が延長されます。
<改正の概要>
従来は消費税10%の契約での取得のものにつき、住宅ローン控除13年の特例の適用にあたっては、2020年(令和2年)12月31日までの入居期限の要件がありました。
(コロナ特例により一定の契約期間内の契約締結については、2021年(令和3年)12月31日まで入居期限延長)今回の改正については、以下の期間内に契約したものについては、入居期限が2022年(令和4年)12月31日まで延長されることとなりました。
・注文住宅の場合 → 2020年(令和2年)10月1日から2021年(令和3年)9月30日まで
・分譲住宅、中古住宅、増改築等の場合
→ 2020年(令和2年)12月1日から2021年(令和3年)11月30日まで
また、併せて、上記の住宅ローン控除の延長が適用される期間内(住宅にかかる消費税率が10%で、かつ、2022年(令和4年)12月31日までの居住開始のもの)に取得する住宅については、従来の床面積要件(50㎡以上)が緩和され、40㎡以上であれば住宅ローン控除が可能となります。
但し、床面積要件が40㎡以上50㎡未満のものについては、所得要件として、合計所得金額が1,000万円以下の場合に限ります。
<改正のイメージ>
<適用時期>
上記改正は入居時期が2021年(令和3年)1月1日~2022年(令和4年)12月31日までのものとなります。また、併せて今後注目される点としては住宅ローン控除の控除率の見直しです。
会計検査院の指摘によると、住宅ローン控除の控除率(1%)を下回る借入金利で住宅ローンを借り入れている場合が多く、住宅ローン控除による税額の軽減額が支払い利息を上回る、といった状況があることから、令和4年度の税制改正において、控除額の控除率の在り方を見直す、とされていて、こちらも今後の注目点です。
(5)その他注目点
今回の税制改正大綱においては改正項目には入っていませんが、資産家が注目すべき項目として相続・贈与一体課税への移行があります。
令和3年度税制改正大綱の基本的考え方にて、『相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直すなど、格差の固定化の防止等に留意しつつ、資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める。』との記載があり、今後の相続税、贈与税、相続対策の在り方が大きく変わる可能性があります。
現時点では、まだ具体的な改正内容や今後どのような議論が行われるのかなどは不明ですが、今後の動きを引き続き着目していく必要があります。